【LoL】MSCにおけるLPLとLCKの戦略の違いと、IGに何が起こったかの分析【長文】

OP

最近この動画(中国語)を発見して、これを英語圏の人たちのために翻訳するのはとても有益じゃないかと思った。LPLの一般的な視聴者は、俺たちとはとても異なる、そしてしばしばとても深い、ゲーム理解をしているからだ。以下は俺の意見ではなく、動画投稿者の視点だ。

まず、動画作成者は免責事項から始めている。これは自作メディア(LoL忍者訳注:素人が趣味で作成した動画)であり、間違っている可能性もあるが、自分の考えを説明することにフォーカスしたため、間違っているかどうかは自分で決めて欲しいとのことだ。

※LoL忍者訳注:中国語⇒英語⇒日本語という翻訳プロセスのため、中国語を知る読者からすると大分おかしな箇所が発生している可能性がある。悪しからず。

 

以下は、LoL忍者による全体のまとめ。+をクリックかタップで展開。

まとめ(ネタバレ注意)
  • 10.7~10.10のメタの変化にどう対応したかがポイント。
  • 現在のメタではバロンよりドラゴンソウルが重要ゆえ、ポークメタにシフトした。
  • LPLはレーンフェーズと集団戦にハッキリ分かれるが、LCKはレーンフェーズを延長するようなプレイスタイル。
  • JDGは、Kanaviというキーマンを攻略され苦戦した。
  • FPXは、Tianがジャングルナーフのために苦しんだが、Khanがとうとうフィットし始めた。
  • IGは、メタに追いつけなかったことと、TheShyの不調が大きな敗因。
  • TESは、KarsaとKnightの連携が良くなり、速いペースで爆走した。
  • LoLはやはりチームゲームだ。

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LPLとLCKのMSCにおける違いは、パッチ10.7~10.10間の問題をどう解決するかの違いである。

 

LPLスプリングスプリットのプレイオフでは、ベストADCはヴァルスであり、カリスタ、ミス・フォーチュン、アフェリオスと続いた。10.8でのナーフによって、カリスタはMSCまでにトップティアから転落した。

 

動画投稿者は、まず「ポークトレンド」から論理を展開した。ポークトレンドは、ドラゴンソウルが重要なシーズンに対する、LCKとLPLの同一の回答である。シーズン開始直後の思考プロセスにおいては、ドラゴンをコントロールするためにはファイトする必要があった。ゆえに、ミス・フォーチュン、ランブル、オーン、アジールのような集団戦指向のチャンピオンがピックされた。

 

しかし、シーズンの理解が進むに連れて、ヴァルス、エズリアルなどのポークチャンピオンが使用され始め、ボットレーンでの優位を獲得し、ドラゴンをコントロールするようになった。

 

Riot Games

Riot Games

 

バロンのナーフと、その他のシーズン10の変更の組み合わせは、アドバンテージを獲得しやすくなったことと、ゲームを終わらせにくくなったことを意味している。したがって、ポークチャンプをピックするインセンティブが更に生まれた。ポークで削られると、タワーシージを防衛することが難しくなるからだ。

 

今や、ゲームを終わらせるためにドラゴンはとても重要だが、実はバロンはそれほどでもない。つまり、ポークチャンピオンをピックすることは、次の理由から2倍のインセンティブとなる。
a) ドラゴンをコントロールするため。
b) バロン獲得後のシージをより強力にして、ゲームを終わらせるため。

 

ポークには以前問題が存在していた。ポークチャンピオンはDPSが低いため、バロンを獲得するのが難しいという問題だ。しかし、今シーズンではバロンはドラゴンソウルに比べると重要ではないため、ポークチャンピオンのDPSの低さは問題ではなくなった。バロンバフを獲得すること自体は悪いことではない。

 

したがって、10.10(MSCにおけるパッチ)までに、誰もがポークチャンピオンをピックし、その結果、ヴァルスは108%ピックバンとなった。そしてエズリアルとアフェリオスがそれに続いた。これはLPLとLCK共通である。

 




 

LPLとLCKの違いは、トップレーンの理解にもある。例えばジェイス。LPLでは、春の間、ジェイスは不人気であり、勝率も低かった。だがLCKではジェイスは勝率62%であり、バン率も高く、25試合でピックされた。

 

LPLとLCKは、プレイスタイルが異なるため、トップレーンの理解が異なる。LCKは安定したマクロスタイルで知られ、眠くなるような試合であり、最低のリスクに対して最高のリターンを狙うことを重視する。

 

また、LCKは、カウンターまたは安全なマッチアップによるピック&バンからのアドバンテージの獲得+ジャングル視界からのアドバンテージの獲得を組み合わせ、数的有利になる状況を探し、トップレーンのアドバンテージを最大化しようとする。

 

例としてT1対FPXの、ジェイス対ブラッドミアを挙げる。 ジェイスはブラッドミアの序盤のカウンターだが、結局、ジェイスはそれほど多くのアドバンテージを得ることができず、ブラッドミアのスケーリングを抑えることができなかった。

 

ただし、その後に続く事象はLCKとLPLの違いを示している。 T1はジェイスでスプリットプッシュし、安全を確保するためにたくさんのビジョンを投資した。これにより、1対1では勝てない状況でもジェイスが続行できることが保証された。

 

視界のアドバンテージにより、ジェイスは両方のレーンでスプリットプッシュし、対戦相手にプレッシャーを与え、同時に敵よりも素早く集団戦に合流することができる。また、視界のアドバンテージを利用して、敵一人をキャッチして倒すことを狙えるのも言うまでもない。これがLCKのトップレーンの理解であり、 SSGのシーズン7の優勝につながった要因である。

 




 

TheShyがLPLにいることで、LPLはトップレーンについて異なる理解をするようになった。つまり、レーンでうまくやれたなら、集団戦で戦う必要があり、レーンで負けた場合は、さらに集団戦で戦う必要があるということだ。 LPLでレーンのカウンターを取れたなら、ジャングルや他のレーンは、アグレッシブなタワーダイブなどにより、レーンフェーズでカウンターのアドバンテージを最大化するのに役立つ。

 

まとめると、LPLはレーンフェーズと集団戦フェーズ(5v5のARAM)にハッキリ分かれているが、LCKは、まずレーンフェーズがあり、そのレーンフェーズを中盤に向けて延長していくような戦い方をする。したがって、LCKはレーン戦で急いで対戦相手にプレッシャーを与える必要はない。重要なのは、対戦相手と比較して、安全に、楽に育つことである。比喩的な表現をするならば、LPLは顔面ストレートパンチで相手をぶっ倒すようなものであり、LCKは細かい千切りで相手をじわじわ倒すようなものだ。

 

両者のスタイルの違いはドラフトフェーズから見ることができる。T1は、対FPXでイレリアをバンしているが、KhanもDoinbもイレリアをあまりプレイしていない。他のLCKチームも同様のバンを行った。 LCKはトップレーンで絶対的なカウンターを探すのではなく、プレイしやすく、ファームで成長することができて、スケールしやすいことだけを探している。

 

これには、リードを勝利につなげることが難しいという問題が伴う。したがって、LPLチームがレーンフェーズであまり混乱しない限り、中盤が始まると、LCKマクロを吹き飛ばすことが簡単になる。

 

さらに、スプリットプッシュの安全性を確保するための視界への投資は、メインの集団戦の視界が少なくなることを意味する。つまり、視界の欠如により、チームが危険に晒されることに繋がる。

 

LCKのリスク回避スタイルは、彼らがあまりにもためらいがちであることを意味する。これは、以前はレーンスキルの違いによるものだったが、最近では、LPLとLCKのトップレーナーが近づいているため、欠陥が表に出始めている。

 




 

動画投稿者は、それぞれのチームについて話し始める。春の勝者であるJDGは、インスピレーションを得るための仮想敵を見つけられなかったため、春のプレーオフのスタイルを継続した。しかし、パッチの変更により、ミス・フォーチュンとオーンのコンボが突然外れた。JDGにとってはまだ大丈夫ではあったものの、問題解決に関する多くの失策がMSCの失敗につながった。

 

ジャングルに関するJDGの問題は、Kanaviがメイジジャングラーかマークスマンジャングラーを好むということであった。グレイブスとキンドレッドが消えた時、Kanaviはメイジジャングラーを探すことしか出来なかった。

 

 

そして、FPXはKanaviの、序盤にガンクして、中盤はファームするという傾向を利用して、中盤しばしばインベードして、Kanaviを無力化した。

 

これは、Kanaviがファームをしている間にTianがガンクしようとしていた春の失敗から学んだ結果である。つまり春は、Tianがガンク失敗した場合、Kanaviは集団戦でTianよりも大きな影響を与える可能性があった。

 

したがって、FPXは、春での失敗から学んだ後、Kanaviの弱点を突いて攻略した。JDGのお気に入りピックだったミス・フォーチュンが弱くなったため、Kanaviを守ることができなくなってしまったことも言うまでもない。要約すると、FPXはKanaviを分析〜攻略し、それゆえJDGを攻略して倒した。

 




 

次はFPXを分析する。FPXは1シーズン(1スプリット?)かけて、ついにKhanをチームにフィットさせた。昨シーズンのFPXはTianを中心にゲームを組み立てていたが、S10ジャングルのナーフで、Tianがカウンタージャングルされた後に空のキャンプに戻ってしまうと、大きな問題となっていた。

 

Worlds 2019 Semifinals Day 1

 

したがって、Doinbはゲームを安定させるためにキャリープレイを試みたが、それはTianのリソースが少なくなることを意味している。Tianは今シーズン、ひどく不格好に見えたことだろう。ジャングルがナーフによってめちゃくちゃになり、パフォーマンスの不安定さを引き起こし、ガンクやファイトのリターンを100%求めることができなくなったからだ。投資のリターンを得られないならば、無力と化す。

 

Worlds 2019 Semifinals Day 1

 

FPXはマークスマンジャングルを他の新しいピックとともに実験したが、それでもMSC全体を通じてTianの苦闘を見ることができる。しかしながら、Tianに必要だったものは時間のみであり、Khanがチームにフィットすることはよりエキサイティングであり、FPXがMSCで新しいことを試そうとしたことは、称賛に値する。

 




 

次はIGを分析する。 MSCでのIGのやられぶりは、彼らがもはやティア1チームではないことを意味する。 TheShy、そしてIGで何が起こっているのかを理解するためには、春を振り返る必要がある。

 

3月11日、パッチ10.4において、TheShyがカリスタトップを出し、トップレーンで途方もない経済的格差を生じさせ、その結果、IGは、ヴェインなどの他のマークスマンをも実験しはじめた。

 

コンセプトは、トップマークスマンで相手を完全に封じ込め、試合を4v5に変えて、集団戦の優位性を高めることにあった。集団戦を行うには、基本的に経済でほぼ同等でいる必要がある。ゴールドの差が大きすぎると、集団戦には勝てない。したがって、トップマークスマンは集団戦を勝つための良い解決策であった。しかし、前述したように、メタはポークヘビー構成へと向かっていった。

 

IGは集団戦を強みとしていたため、春は強そうに見えた。誰もTheShyがセト、ランブル、オーンなどをそれほどうまく扱えないとは思っていなかったこともあり、彼の存在はピック&バンにおける大きなプレッシャーであった。

 

パッチ10.5において、トップレーンにはよりインパクトが与えられた。IGは、「トップレーンでマークスマンを出し、対面を完全に封じて4v5の状況を作り集団戦で勝つ」という彼らのコンセプトをより追求しようとした。その結果生まれたのが、レネクトンにクインを当て、モルデカイザーにヴェインを当てるという戦術である。

 

IG対JDGでは、TheShyのセトが超一流では無いことが見破られ、さらにはLeyanもセトを扱えなかったため、ドラフトフェーズにおけるTheShyのプレッシャーは弱まった。しかし、当時メタ中のメタであったセトを上手く扱えないことは大きな弱点であり、IGは諦めて、代わりにLCKでピックされていたチャンピオンをピックすることにした――ジェイスである。

 

Worlds 2019 Semifinals Day 1

 

ただし、ジェイスはLPLでは機能しない。TheShyはLPLのメタとプレイスタイルにフィットしないジェイスで苦戦し、随分ひどく見えたことだろう。LCKでは、ジェイスでレーンフェーズを延長させ、そのまま継続的に前進するが、LPLのレーンフェーズは明確な線引きで終了する。これは、TheShyが短い時間制限を課せられたレーン強者を演じなければならなかったことであり、それはめったに起こらないことであった。

 

レギュラーシーズンのIGは新しいことを実験したが、プレイオフに失敗した。なぜなら、レギュラーシーズンで練習に時間を投資したピックはバンされてしまい、IGは突然チャンピオンを使い果たしてしまったからだ。

 

パッチ10.7以降、これがIGの主要な問題であった。すべてがボットレーンに急激にフォーカスされるようになり、IGがトップ〜ジャングル〜ミッドを軸としたチームであったため、強いボットレーンを持たないことが致命的な問題となったためだ。

 

IG以外のチームもトップレーンのアドバンテージを求めてのピック&バンを試みたが、トップレーンに完全に依存していたわけではなかったため、他のチームのほうが上手く行ったと言える。

 




 

IGはまた、メタの理解も追いついていなかった。10.7では、ウーコンは永久バンだった。しかし10.9の微ナーフで、10.10ではウーコンは登場するようになった。それはTheShyのマークスマントップがカウンターされることを意味していた。ウーコンは、一度アドバンテージを握ると、マークスマンを圧倒できるからだ。

 

TheShyのメカニクスが悪化したことも火に油を注いだ。TheShyは、奇妙な状況やファイトで、よくわからないデスを重ねていた。

 

新しいジャングルや、現在のジャングルチャンピオンのプールは、Ningにフィットしておらず、PuffとSouthwindが不安定であり、あまり良くないことと相まって、今現在、見ていられる選手はRookieだけだ。特に、ボットレーンがジャングルや他のレーンからの投資がなければ2v2でキルが発生しにくい現在のメタでは、大きな問題である。

 

IG ROOKIE

 

Rookie自身も苦戦しており、彼が投資したニーコやランブルもメタから消えてしまった。結局Rookieはシンドラとルブランに帰ったが、彼の春の投資はすべて無に帰してしまった。ある個人が新しいピックを試すということは、チーム全体もそのピックのために一緒に練習しなければならないことを意味している。

 

動画投稿者の見解によると、セトを練習していなかったことがIGのMSCにおける大きな敗因である。なぜなら、オーンに対する自然な反応は、エイトロックスかセトであり、IGはエイトロックスしか扱えなかったため、バンするのは容易であった。

 

まとめると、複数の要因が組み合わされることで、IGはここ数ヶ月で破綻した。そこからどのように修正していくのかの見通しは、まだ不明である。

 




 

次はTESを分析する。対LCKの試合で、TESはたった一つのベースのタワーも失わず、マクロに大きく依存するLCKの攻撃能力の弱さを白日の下に晒した。メンバー一人ひとりが自分の役割を見つけたので、TESは非常によく見えた。

 

春のTESはKarsaに大きく依存していた。Knightはファームとスケーリングが大好きだが、育つのには時間がかかった。15分を過ぎたKarsaは行き場を失い、Knightはローミングでも場違いに感じられた。

 

 

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しかし、MSCでは、Knightはローミングを改善し、Karsaと協力して動くことで他のレーンのアドバンテージを築き、安全に育つことができた。

 

TESのミッドとジャングルは上手に連携し、試合のリズムを改善し、TESはノンストップで攻撃的なプレッシャーをかけつづけることを実現した。

 

つまり、Karsaが賞味期限切れになりそうなころには、TESはもう既にドラゴンソウルを手に入れようとしていることを意味している。ペースの速いメタがピッタリとフィットしており、TESはわずかな有利を踏み台にしてアンストッパブルな存在になったように感じられることだろう。

 

YYJ(yuyunja?)と369も改善され、369はよりキャリーできるようになった。369は今や円熟したトップレーナーである。

 

ソロキル、ガンク、カウンターガンクは変動性が高い。勝利への最も基本的で一貫した要因はチームメイトをより素早くサポートするためのマップ移動であり、数的有利をつくることである。チームワークとは、すなわち安全装置があることを意味する。たった一人のスター選手にキャリーしてもらう必要はない。


訳者(動画を中国語から英語に翻訳した人)の意見

俺たちが知っている、TESの台頭、IGの凋落、MSCにおけるFPXとJDGの苦戦という事象についての説明が最大のポイントだろう。また、LPLとLCKでピック&バンの概念が異なるのも興味深い。また、WCSでNingが言ったように、「素早く変化できるものが勝利する」のであり、G2のコーチが言ったように「最も劣ったものは最も勝てない」ということでもあろう。省略した箇所はあるが、全体的な考えと概念はまとめられたと思う。

 

OP 以下は投稿記事の部分訳。元となった動画はここ(韓国語)。 文脈 CloudtemplarはMSCでLCKが勝...
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eyes氏はLJL公式キャスター、配信者。日本のLoL競技シーンを黎明期から支えてきた立役者。ゲーム実況者のプロフェッショナルの草分け的...
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翻訳元: [Translation] Analysis on Mid Season Cup Strategy Differences between LPL and LCK, and what is going on with IG

 

管理忍

眼光炯々でござる。

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Source 【LoL】MSCにおけるLPLとLCKの戦略の違いと、IGに何が起こったかの分析【長文】 https://lolninja.net/2020/07/11/post-19762/